「虐殺器官」が面白かったので、「ハーモニー」も読んでみました。
21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、 人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。 医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、 見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。 そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―― それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、 ただひとり死んだはすの少女の影を見る―― 『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
「虐殺器官」に比べ手に取りやすいタイトルです。表紙が “白” を基調としていて、「虐殺器官」の表紙は “黒” なので対になっています。
また、主人公が女性という違いもあります。
主人公の名前は霧彗トァン。最初読めなかったです。なのでルビを振ってみました。
ちなみに「ハーモニー」はとてもルビが多い作品です。
基本的にSF作品は造語が登場することが多いのでルビが多くなると思いますが、
「ハーモニー」では特に多いと感じました。
たとえば
「大災禍」
「生府」
「拡張現実」
単語だけ抜き出すと “?” ですが。
世界観がしっかりとしているのでルビが多いといってもまったく違和感なくサクサクと読み進められます。物語にスピード感があることも特徴の一つだと思います。
ちなみに「ハーモニー」冒頭1ページ目にweb系の人ならピンと来る羅列があります。(webじゃない人もピンと来る人はきます)
以下冒頭部分を引用します。
<?Emotion-in-Text Markup Language:version=1.2:encoding=EMO-590378?>
<!DOCTYPE etml PUBLIC :-//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>
<etml:lang=ja>
<body>
HTMLかな? と思いますが、
こちらはetmlです。
おそらくetmlとはエモーショナルテキストマークアップランゲージだと思います。
ちなみにHTMLというのはwebサイトを作るための言語です。
僕たちが普段目にしているwebサイトは、ほとんどHTMLで作られています。
ずらずらと書かれた英語だか記号だかよくわからない羅列のことです。
文中には例えば
<anger>〜〜〜</anger>
や
< hopelessness>〜〜〜</hopelessness>
といったように登場人物の「感情」がマークアップされています。
<anger>は怒りの感情をマークアップする要素。
< hopelessness>は絶望の感情をマークアップするための要素です。
全体がこういったメタ的な構成になっていますのでとても面白いです。
ちなみに調べてみたら、伊藤計劃さんはウェブディレクターとして働いていたことがあるそうです。ナットクです。
ぜひ興味を持った方は読んでみてください!
「Project Itoh」として他にも
「虐殺器官」と「屍者の帝国」がアニメ映画化とのことです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
それではまた。
小説関連の記事
- 伊藤計劃の「虐殺器官」は「夢中で面白い本が読みたい人」におすすめです
- 小説で楽しめるメタルギアソリッド
- 小説を読まない方にこそおすすめしたい伊坂幸太郎の作品5選
- おすすめはこれだ! 面白いガンダム小説5選